

奄美の海岸線
“奄美は全宇宙の生まれた実在が雛形として言霊が生まれたところである高天原として祭祀が執り行われた処という意味で、神々の集う場である。”
大峯本宮天川大弁財天社宮司
奄美大島は、鹿児島と沖縄のほぼ中央に位置し、人口約7万人、周囲460km、美しいさんご礁に取り囲まれた亜熱帯気候の島です。年間約3000mの雨が育む亜熱帯照葉樹林(島の面積の約80%)には、日本ではじめて天然記念物に指定されたアマミノクロウサギ(現在は、特別天然記念物。)や、固有種であるルリカケス、オオトラツグミ、ケナガネズミ、オットンガエル、などのたくさんの希少な動植物が生息し、同じ琉球弧の島々である、徳之島、西表島、沖縄本島やんばる、とともに、世界自然遺産候補になっています。
島を構成する集落は、シマと呼ばれ、そこはまた、海のかなたにある豊饒の国、“ネリヤカナヤ”からやってくる来訪神と天から降りてきた神様が、神様の住む山、カミヤマから神様の通る道、カミミチを通って、神々同士や人間がお互いに出会う場所でもありました。祭事は、霊力を持つノロの家系の女性達が執り行い、各家には、水や火の神様が祭られ、山に入る際には、必ず山の神様にご挨拶をし、穀物が実れば、先祖や自然に対する感謝のお祭りを行い、自然に対する畏敬の念と感謝を忘れることがありません。

タンギョの滝
月のリズムで暦が進むこの島では、月と潮の満ち引き、天気に応じてその日の仕事や祭事が決まり、 旧暦の1日と15日、すなわち、新月と満月には、必ず、お墓参りをして、自分たちのいのちを繋いでくれた先祖に感謝します。稲の収穫が終わった旧暦八月の最初の丙の日には、今年も実りをもたらしてくれた自然と常に人々を見えない世界から守ってくれる先祖に対する感謝を表し、五穀豊穣を願う感謝祭が行われ、人々は七日七夜、家々を回りながら、八月踊りを踊ります。
新しい命が生まれた際には、集落全部でお祝いし、屋根のふき替えや田植え稲刈りなどたくさんの人手が必要な際には、集落が共同でことにあたり、集落全部がまるで一つの大きな家族であるかのように長い間助け合って生きてきました。
何か悩み事があれば、先祖に語って元気をもらい、病気になれば、自然とお祈りの力で、元気を回復させ、島のシャーマンであるノロやユタと呼ばれる人たちの存在が、見えない神々の世界と人の世界を繋ぐ仲介になります。人々の心の支えとなってくれます。

ガジュマル
そして、いのちの終わりにはまた、また集落全部でお別れをし、 みんなの手で、やさしく土に還されたいのちは、やがて大きな木や森となって、島や子孫を守ってくれるのです。
喜び、悲しみ、誰かに対する愛しい気持ちなどの感情、祈りや祭りの際に使われる言葉や世代に伝えたい大事な教え、そして、噂話でさえ、生きていることすべては自然と唄になって、親から子へ、子から孫へと、口伝えで伝わってきました。シマウタと呼ばれるこれらの唄は、人々の心の支えとなり、約400年間続く、薩摩藩の圧政の際にもアメリカの占領下におかれた際にも常に人々は唄を歌って、魂の元気を取り戻し、感謝の気持ちと優しさを忘れずに生きてきたのです
そのような神と人と自然が美しく調和してきた奄美にも、1953年の日本復帰後、“本土並み”とのスローガンの元、急速な近代化の波が押し寄せることになりました。 行き過ぎた公共工事は、島の自然を壊し、海水温の上昇やオニヒトデの大量発生などにより、大量のサンゴが死滅し、人間の手で持ち込まれたマングースなどの外来種が島の生態系を脅かし、開発と島に自生する貴重なランなどの植物が高いお金に変わることを知った一部の人たちの盗掘によって、それらの植物は激減してしまいました。

奄美の海岸線
ユタのお祭り
森林伐採現場
かつて、島のいたるところにあった水田は、減反政策の元、一部の集落を除いてほとんどなくなり、稲の神様に感謝するという本来のお祭りの意味が失われることになりました。島の心が宿る島の言葉は、“本土の人たちに通じないから”という理由で、学校で話すのを禁止された時期もあり、日常生活で島の言葉を話せる人たちの数もまた 減ってしまいました。便利で簡単に手に入るものがどんどん島に入る一方、島に入るお金のほとんどが島の外に行くという薩摩以来の経済構造はほとんど変わらず、奄美には、多くの生活保護を受けている方達がいます。
美しい自然がすぐ目の前にあるにもかかわらず、見えない世界との繋がりを感じられる心と体を失い、自分と自分が住んでいる場所に誇りを持てなくなってしまった人たちが増え、心を病み自らのいのちを断つ人達が数多くでてきてしまいました。
グランマザー達をお迎えするこの2010年にも、稼働すれば、島の貴重な森林やそこの住む希少な動植物が失われてしまう事になるチップ工場の建設問題や、同じ奄美群島である徳之島への米軍基地移設問題など島を揺るがす問題が持ち上がっています。
13人のグランドマザー達が憂える問題は、奄美のそれと非常によく似ています。縄文の時代からいのちを繋いで来た自然と調和する島の人たちの美しい生き方と大切に守られてきた島の自然は 今、危機にさらされているのです。それは、四季によって移り変わる多種多様な自然とそれを調和して長い年月を生きてきたはずの日本も同じではないでしょうか?
第8回グランドマザー会議が、提供する議題や祈りが、遠い国の事ではなく、自分たちの国が抱える問題と同じものとして、皆様の心に響き、一緒に解決に向けて行動していくきっかけになることを願い、
“むんぐとぅ(物事)やななでぃ(7代)先 考えよ。”
という、奄美に古くから伝わる“何か物事を決める際には、7世代先のことを考えなさい。”という今回の会議のテーマとまったく同じ意味である言葉を皆様と一緒に考えていければと思っています。
終わりに、感謝や祈りを表す島の言葉で、『自分への見返りなど求めず、ただただ、感謝する』という想いが込められているこの言葉を、この会議に参加して下さるすべての方達に送りたいと思います。
とうとがなし(尊尊我無)
グランマザー第8回会議 奄美大島 ガイド 田町 まさよ